トップ > 博多弁考 > 進行形と完了形
日本の共通語(学校の国語で習う日本語)では、現在進行形の表現と現在完了形の表現は同じ(「動詞」+「いる」)で、その中にある動詞の性質と言葉が発せられた状況によってどちらの意味かを判断しなければならない。
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現在進行形 | 現在完了形 |
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雨が降っている。 | (気づかないうちに)雨が降っている。 |
テレビが壊れている。 | |
ご飯を食べている。 | ご飯は(もう)食べている。 |
飛行機が飛んでいる | 飛行機は(もう)飛んでいる。 |
共通語では、上のようにほかの語を補うなどして状況を明確にしなければ、形から両者の違いを言い分けることができない。しかし博多弁では、これらをいとも簡単に、しかも明確に言い分けられる。
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現在進行形 | 現在完了形 |
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雨が降りよう。 It is raining. | 雨が降っとう。 It has rained. |
テレビが壊れよう。 The televisioin is breaking down. | テレビが壊れとう。 The television has broken. |
ご飯ば食べよう。 (he/she) is having a meal. | ご飯ば食べとう。 (he/she) has had a meal. |
飛行機が飛びよう。 A airplane is flying. | 飛行機が飛んどう。 A airplane has flied. |
さらに理解に苦しむ(と思われがちな)「過去進行形」と「過去完了形」も、博多弁で見てみると、これまたうなりたくなるほど美しく対応している。
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過去進行形 | 過去完了形 |
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雨が降りよった。 It was raining. | 雨が降っとった。 It had rained. |
テレビが壊れよった。 The televisioin was breaking down. | テレビが壊れとった。 The television had broken. |
ご飯ば食べよった。 (he/she) was having a meal. | ご飯ば食べとった。 (he/she) had had a meal. |
飛行機が飛びよった。 A airplane was flying. | 飛行機が飛んどった。 A airplane had flied. |
「よう」の原形は「よる」、「とう(んどう)」の原形は「〜とる(〜んどる)」であろう。どちらも動詞の連用形にくっつく。ただ、「〜とる(〜んどる)」をもっと遡ると恐らく「〜てをる(〜んでをる)」だろうと思われるから、こちらは動詞の過去形を現す「て(んで)」と一緒になる形で発展してきたものである。逆に「よう」は、「て(んで)」を伴わないが、他地方の方言で、「〜ちょる(〜んぢょる)」のように「て(んで)」を伴ったものがあることから、博多弁の「よう(よる)」はそれらとは別個に発展したようだ。
これらと共通語「〜いる」との関係であるが、「〜いる」は古くは「yiru」「wiru」があったのではないだろうか。現在の共通語ではこのヤ行とワ行の違いがなくなった結果1つの「いる」に統一され、進行形と完了形の違いがなくなってしまったと考えられる。一方、博多弁(またはその他西日本方言)では「yiru」が「よる」、「wiru」が「をる(おる)」とに別々に発展したため、本来の日本語にあった違いが保存されたのであろう。
外国語(特にヨーロッパの言語)の学習のおいて、進行形と完了形の違いを理解するのが難しいのは、外国語の文法が難しいのではなくて、その理解の手段に使っている日本語の共通語の機能不足のためだと思う。博多弁には、このように万全な機能があるのだから、外国語学習時にもこれを使ったら良いと思うのだが、どうだろうか。
2006年9月4日
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